「宗教ドラマって大丈夫なのか」と思ったあなたへ
2026年4月2日、テレビ東京の木曜深夜に始まった「るなしい」。原菜乃華の連続ドラマ初主演作であり、「宗教×恋愛×サスペンス」という極めてデリケートなテーマを扱うドラマだ。
原作は意志強ナツ子による同名漫画。2022年上半期「週刊文春エンタ マンガ賞!」最高賞受賞作。恋愛を禁じられた「神の子」が初恋をきっかけに、愛する相手を信者ビジネスに取り込もうとする——設定を聞いただけで「地雷」の気配がする。
3つのリスクを検証する。
地雷①|「宗教」をテレビドラマで扱うタブーの壁
日本のテレビドラマが宗教を正面から扱った例は極めて少ない。理由は明確で、スポンサーが嫌がるからだ。
宗教団体からのクレーム、信者からの抗議、「特定の宗教を揶揄している」という批判。どれほどフィクションだと断っても、宗教をテーマにした時点でリスクが発生する。これは作品の出来とは無関係の、構造的な問題だ。
「るなしい」が描くのは新興宗教的な団体であり、実在の宗教とは無関係だろう。だが視聴者の連想は制御できない。特に近年の社会問題を踏まえると、「宗教二世」「信者ビジネス」というワードだけで拒否反応を示す視聴者は一定数いる。
深夜帯だからこそ挑戦できるテーマではある。だが挑戦と成功は別物だ。
地雷②|原菜乃華の初主演が「難役すぎる」問題
原菜乃華は映画「すずめの戸締まり」の声優や写真集で話題を集めた若手女優だ。だが連続ドラマの主演は今回が初めてである。
演じる役は、幼少期から宗教団体の「神の子」として育てられた少女。恋愛を禁じられ、教団のカリスマとして利用されながら、初恋をきっかけに暴走していく——ベテラン女優でも難しい複雑な役だ。
原菜乃華自身は原作を読んで「独特の空気感と不気味さに強く惹かれた」と語っている。だが「惹かれた」ことと「演じきれる」ことは別次元の話だ。初主演でこの難役を選んだこと自体が、ハイリスク・ハイリターンの賭けである。
地雷③|「恋愛」と「洗脳」の境界線をどう描くか
るなしいの最も危険なポイントは、「恋愛感情」と「宗教的支配」の境界線が曖昧になる物語構造にある。
主人公は愛する相手を「信者」にしようとする。これは恋愛なのか、洗脳なのか。原作漫画ではこの曖昧さを巧みに描いているが、映像化すると「美化」に見えるリスクがある。
特にドラマという媒体では、主人公に感情移入させる演出が基本になる。「神の子」の視点で物語が進む以上、「洗脳する側」に共感させる構造になりかねない。これを問題視する声が上がる可能性は十分にある。
テレ東深夜だからこそ可能な挑戦ではある
ここまでリスクを並べたが、一つ確認しておくべきことがある。このドラマが「テレ東の深夜」で放送されるということ自体が、制作側のリスク管理だ。
ゴールデンタイムでは絶対に通らない企画。深夜帯だからこそ、スポンサーの制約が緩く、攻めたテーマに挑戦できる。テレ東という局の特性——「他局がやらないことをやる」——とも合致している。
問題は、その挑戦が「攻めた」で終わるか「面白い」に着地するかだ。
総評|4項目採点
| 項目 | 点数(10点満点) | コメント |
|---|---|---|
| 企画 | 6点 | 唯一無二のテーマ。だが地雷原を歩く覚悟が必要 |
| 脚本 | 5点 | 原作力は高い。実写での境界線の描き方が全て |
| キャスト | 4点 | 原菜乃華の初主演に難役は賭けすぎ |
| 演出 | 5点 | 深夜帯の自由度は武器。不気味さの演出が鍵 |
| 総合:20点/40点満点 | ||
まとめ|「見るべき人」と「切っていい人」
見るべき人:
- 宗教や洗脳をテーマにしたフィクションに耐性がある人
- 原菜乃華の女優としてのポテンシャルを見たい人
- 「攻めた深夜ドラマ」を求めている人
切っていい人:
- 宗教テーマに拒否反応がある人
- 恋愛ドラマにキュンキュンしたい人
- 初回で「気持ち悪い」と感じた人
るなしいは「万人に勧められるドラマ」ではない。だが万人に勧められないからこそ、刺さる人には深く刺さる可能性がある。問題は、その「刺さる人」がどれだけいるかだ。